2015年10月14日水曜日
ヒジキ
宮城県石巻市の会館で
公演がありました。
家族連れの観客が大勢詰めかけ、
盛況に終わりました。
芝居がハネてバラシをしていると、
搬出口の傍らでジーッとそれを
見つめている1人の少年がいました。
そういう子は珍しくないので
特に気にもなりませんでしたが、
しばらくすると姿が見えなくなり、
15分程経ってからでしょうか
また姿を現しました。
今度は手に色紙とマジックを持って、
黙って見つめていました。
「サインが欲しいの?」と
私が声を掛けると
少年は黙って頷きました。
出演者全員のサインを寄せ書きして
最後に「名前は?」と聞くと
「ヒジキ。」
「え?」
「ヒジキ。」
「……?」
漁港の街だから
そういう名前の子もいるのかな~
半信半疑ではありましたが
『ヒジキ君へ』と書いて渡しました。
少年は、それを持っていなくなり
また数分後に戻って来ました。
「ヒジキでねェ。ヒディキだ。」
「……。」
その子の名が
ヒデキ君だということに
やっと気づきました。
でも、色紙のストックはないので、
書き直してあげることは出来ません。
仕方なく、ヒジキを二重線で消し
ヒデキと横に書きました。
あの子は、あの色紙を
果たしていつまで
持っていてくれたでしょうか?
あれを見る度に
何と思ったでしょうか?
私は、そう思う度、
未だに胸が痛いです。
東日本大震災で
石巻は大きな被害を受けました。
無事でいてくれれば
あの子はもう30代後半の
オジサンになっているでしょう。
To be continued
武内利之の「ザッツ・ライフ」
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