高校1年生の夏休み前、私は同学年の女子、
Aちゃんに夢中になりました。そして夏休みに、
彼女の家に押しかけて交際を迫りました。
一度目は断られ、二度目も断られ、三度目に
ようやくお付き合いの承諾を得ることができ
ました。話したこともない人からいきなり
交際を申し込まれるんですから、Aちゃんは
さぞ面食らったことでしょう。その頃の私には
それがいかに非常識で、相手が受け入れられな
い行いであるかなどと考えることができません
でした。
初恋の定義は難しいけど、私にとって
初恋と言えるのは、おそらくあの頃の経験
だったと思います。
同学年だけどクラスは別で、話すらしたこと
のないAちゃんのどこに、私は惹かれたのか…。
彼女には悪いけど、特別美人だった訳でも、
スタイルが良かった訳でも、秀でた才能が
あった訳でもないのに。私は今でもはっきり
覚えてます。彼女が誰かと廊下で立ち話を
してるところを何度も見ました。彼女が相手
にまっすぐに向き合い、しっかり相手を見つ
めて話をする姿に誠意と優しさを感じ、
とても魅力的に映ったんです。
けれども私は、芸大目指してレッスンと勉強に
明け暮れる毎日だったので、彼女と共有できる
時間なんてありませんでした。なので初めの
頃は、学校の帰りにバス停まで一緒に歩くだけ
のお付き合いでした。彼女はバスを乗り継いで
帰宅しますが、私の家は学校から徒歩で帰れる
距離でした。だから、バス停まで送り届けて
バイバイする訳です。でも、レッスンがだん
だん苦しくなり、彼女と過ごす時間がだんだん
楽しくなって行くにつれ、私は彼女と一緒に
バスに乗り、彼女の家まで行くようになって
いました。彼女の部屋で一緒に勉強をして、
夕飯をごちそうになって、バスを乗り継いで
帰ったものです。
そして、忘れもしない11月17日。彼女の家
からバス停に向かう途中、彼女は「寒い…。」
と言って私に手を差し出しました。たいして
寒くもないのにそんなこと言われて、私は一瞬
頭が真っ白になりました。でもすぐに、本能的
に彼女の手を握りました。それが生まれて初め
て、フォークダンス以外で女性と手を握る経験
でした。そしてバス停にバスが来た時に、今度
は私の方から彼女を引き寄せキスをしました。
それが生まれて初めてのキスの経験でした。
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武内利之の「ザッツ・ライフ」

