2015年7月3日金曜日

今でも妻を愛してる

或る訪問介護事業所の壁に
こんな書が飾ってありました。
「老いることは辛いこと
 長生きすることは
 その辛さに耐えること」

93歳の夫が83歳の妻に頼まれて
殺害したとして、嘱託殺人の罪に問わ
れた裁判が7月8日に結審します。
妻は平成13年から足腰が弱まり、
転倒を繰り返すようになりました。
14年には腰の骨折が判明し
「痛みで眠れない。」と漏らすように
なりました。軽度の認知症である夫は
調理・買物・トイレ介助など、献身的
に介抱し、夜は添い寝をしました。
妻が介護サービスを受けることを
嫌がったからです。しかしその一方で
「家族に迷惑をかけたくない。」と
妻がメモを残すこともありました。
そしてついに妻から殺害を頼まれた
夫は、ネクタイで首を絞めて妻を
殺害し、自ら110番通報しました。
夫は「今でも妻を愛しております。」
と語り、子ども達は「父は追い詰め
られていた。ごめんなさい。」と
悔やんだそうです。

以前にも
こんな出来事がありました。

【東海大学安楽死事件】
病院に入院していた末期がん症状の
患者に塩化カリウムを投与して患者
を死に至らしめたとして、担当医師が
殺人罪に問われた刑事事件。日本に
おいて、裁判で医師による安楽死の
正当性が問われた唯一の事件です。
判決は患者自身の死を望む意思表示
がなかったため、嘱託殺人罪ではなく
殺人罪で被告人を有罪(懲役2年
執行猶予2年)としました。ただし、
患者の家族の強い要望があった
ことから、情状酌量により刑の減軽
がなされ、執行猶予が付されました。

【名古屋安楽死事件】
重病の夫の苦痛を見かね、妻が牛乳に
毒薬を混入して安楽死させた事件。
名古屋高裁は安楽死の要件として
1. 不治の病で死期が目前。
2. 苦痛がはなはだしい。
3. 死苦の緩和が目的。
4. 意識が明瞭であり、意思の表明が
  可能な状態の本人から、嘱託又は
  承諾がある。
5. 医師が行うべきだが、医師が行う
  べきでないと認められる特別な
  事情がある。
6. 方法が妥当なものである。
の6要件を示しました。判決は5と
6の要件を満たさないとして、被告人
に嘱託殺人罪の成立を認めました。

私は若い頃『ソイレント・グリーン』
という映画を観ました。死人の肉を
使って食品を作るというSFでした。
安楽死センターがあり、希望者がそこ
へ行って、部屋の色、BGM、映像、
最後の食事などを注文し、心静かに
死んで行くシーンが印象的でした。

平均寿命世界1位の我が国にとって
『生きる苦しみ』から逃れる権利を、
人に与えられた最後の権利として
認めるか否か…。難しい問題では
ありますが、もっと議論があっても
良いのではないかと、私は思います。

皆さんは
いかがお感じになりますか?

“また君に恋してる”
坂本冬美&ビリー・バンバン

https://www.youtube.com/watch?v=EH-vRZzxLfI&spfreload=10

武内利之の「ザッツ・ライフ」
原則、毎週月・水・金の朝に更新。
E-mail:
at-home-takeuchi@aqua.ocn.ne.jp

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