クラシック音楽の歴史に
あまた輝くメロディー・メイカー
その中で最も印象に残る人と言えば
シューベルト
(1797~1828)
ベートーベンを敬愛しすぎて
ストーカーのように尾行した
ことのある彼、31歳の短い
生涯でした。
交響曲第8番「未完成」
第2楽章までしか完成しておらず
第3楽章は
オーケストレイションで9小節
ピアノ譜で114小節
単旋律で16小節
計139小節で終わっています。
ですから
演奏会で演奏されたり
レコーディングされるのは
第2楽章までです。
ですが、その2つの楽章の中に
とても美しいメロディーが
いっぱい詰まっているんです
第1楽章の第1テーマ
このフレーズは
中盤・終盤にも使われ
第1楽章全体を支配する
重要なモチーフです。
まるで人生の終焉が
間近に迫っていることを
予感しているような
悲劇的なメロディーです。
特にこのフレーズは
終盤にしつこく繰り返され
おどろおどろしく終わります。
長男が小学生の時に
「タ~ラ~ラ、だけの繰り返しで
こんないい曲ができるんだぞ。」
と言って聴かせたら、関心せずに
ただただ怖がっていました。
第1楽章の第2テーマ
これから
どこへ連れて行かれるんだろう?
と思わせる
ミステリアスなメロディーです。
第1楽章の第3テーマ
先の見えない暗闇から突然
明るい花畑に連れて行かれたような
穏やかで楽しげなメロディーです。
特にこのフレーズは後に悲劇的に
激しく変奏され、生と死の間を揺れ
動く魂のように感じさせます。
第2楽章の第1テーマ
ファゴットとホルンのハーモニー
対旋律にコントラバスのピッチカート
たった2小節で
天国への扉を開けるような
雰囲気を感じさせます。
それに続いて現れる
たった4小節のメロディー。
バイオリンとチェロの対旋律は
浮世のしがらみから解き放たれた様な
清らかさを感じさせます。
この冒頭の7小説は2楽章の最後に
より清らかな調べで繰り返され、
あたかも満ち足りた気持ちで
あの世への旅路につく
といった感があります。
それ故にシューベルトは、第3楽章で
行き詰ってしまったのではないか
と私は考えています。実際、
この作品は絶筆ではなく
いったん筆を置いて別の作品を
完成させているんです。
第2楽章の第2テーマ
クラリネットやオーボエで奏でられる
メランコリックなメロディー。
あの世に行く前に
この世で経験したこと
ちょっと振り返ってみましょうか…
と思い出の世界に
誘うような感じがします。
このフレーズも
やがて激しく悲劇的に変奏され
過去の情念が甦ったかのような
雰囲気を感じさせます。
この交響曲は、死期の迫った
シューベルトの、生の喜び・執着
そして死の予感・恐れなどが交錯して
いるように、私には感じられます。
それだけに重苦しいです。清らかな
メロディーでさえ、ほんの束の間の
安らぎという感じがします。
だからこそ美しいんです。
10年に1回ぐらい
お聴きになってはいかがでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=1t2VUFN6dyQ
武内利之の「ザッツ・ライフ」
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