20代半ばの頃
私は『赤毛のアン』という作品で
全国公演をしていました。
大分県の別府市という街で公演し
終演後に俳優が出口で観客を握手
で送り出す『送り出し』をしていた時
顔を真っ赤に泣き腫らしたお母さん
が小さな三人の子どもさん達ととも
に握手をして帰られました。
翌年『足長おじさん』という作品で
同じ別府の会館で公演し、今度は
送り出しではなく、ロビーで観客と
俳優との交流会をしました。その時
去年のあのお母さんが1年成長した
子どもさん達とともに参加しておられ
発言されたんです。
「去年、夫が急死し、私一人で幼い
三人の子をかかえ、正直無理心中
しようかというところまで考えました。
そんなときに『赤毛のアン』の公演が
あることを知り、せめてこの子達に
劇を見せてやってから…、と思い
鑑賞したら、とても感動し、頑張って
生きていく勇気を頂いたんです。」
そうおっしゃり、今度は私の方が
顔を真っ赤に泣き腫らすことに
なりました。私は高校1年生のとき
母に二度の自殺未遂をされた経験が
あったので、心に響いたんです。
「好きで始めた仕事だけど、人様の
お役に立てる立派な仕事なんだ。
よし、一生の仕事にしていこう。」
その経験があったからこそ、食えない
と言われる演劇の道を、昨年5月
まで歩んで来られたんだと思います。
時を隔て今年3月
私はある方と出逢い、貴重な一言を
頂きました。互いに自己紹介をし
生年月日が何年?という話の中で
飛び出した一言…
「生まれて来ちゃったんです。」
私の胸にグサリと突き刺さり
まるで生涯抜き取ることのできない
トゲが刺さったかのように
忘れることの出来ない
心の痛みとなりました。
「生まれて来て良かったと
思ってほしい。その為には…。」
私は残りの半生を
この言葉の答え探しに
費やすことを決意しました。
Because, that’s my life !
武内利之の「ザッツ・ライフ」
原則、毎週月・水・金の夜に更新。
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