演劇学校の同級生に
有名私立大学を卒業して
入って来たU氏がいました。
私は高卒で入りましたので
4歳年上の立派な大人でした。
見た目は地味な感じなんですが
結構いろいろ話しかけてくる
積極的な人でした。
学校が始まって
まだ1学期も終わらない頃
何人かのクラスメイトが
U氏のもとに召集されました。
勉強会を立ち上げて
授業のカリキュラムのない時間帯に
教室を有効利用しようじゃないか
という提案でした。要は、学校の授業
だけでは飽き足らないから
自分達でもやろうよ!ってことです。
彼は演出家志望だったので、役者を
目指す何人かに声をかけた訳です。
最初の頃はエチュードをやって
いましたが、とうとう学内で発表会
をするほど活動が進展し、その内容も
高度で学校の正式な発表会とは次元
の違う演劇活動が体験できました。
その活動は卒業して皆が別の道を
歩み始めてもなお続けられました。
担任の演出家が代行の講師ばかりを
派遣してくるのに業を煮やし
1年目が終了すると本人を呼び出し
談判して(私も同席しました)結局
担任を辞退させるに至りました。
私より大人とは言え22~23の
青年が、学校を通さずに直談判して
解決しちゃうなんて
凄いと思いませんか?
彼は私を自宅に泊まらせてくれたり
あちこち連れてってくれました。
演劇・映画の鑑賞だとか
神田の本屋街の遊歩だとか
劇団の稽古見学だとかでしたが
そういう交流の中で私が得た
ものは計り知れなかったです。
私の一生を決定づけたと言っても
過言ではありません。
「人より良い仕事をしようと
思ったら、睡眠を減らすしかない。」
「人間の避けられない運命は死だ。
だから我々は懸命に生きなければ
ならない。なあ武内、仕事の虫と
言われるようになってみろ。」
そんな重たい言葉をサラッと
言ってのける一方で
宴会の余興の台本を自分が作り
仲間を呼んで徹夜で稽古するという
お茶目な一面もありました。
彼はその演劇学校を卒業後、更に
大手劇団で5年間の下積みを経て
演出家デビュー。すぐに頭角を現し
日本を代表する著名な演出家に
なりました。
私は彼から
本質を見極め、即座に行動し、
徹底的に追及する執念を学びました。
それが決して難しいことではなく
楽しんでしまえるんだということも。
演劇学校の授業では得られない
仕事人として大事な資質を頂けたと
心から感謝しています。
Uさん、有難う!
武内利之の「ザッツ・ライフ」
原則、毎週月・水・金の夜に更新。
E-mail:
at-home-takeuchi@aqua.ocn.ne.jp
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