2016年2月22日月曜日

登録時代 Part6

訪問介護ヘルパーは、各社指定の
記録用紙に支援の記録を書き込み
月に1~2回、溜まった書類を
事業所に提出するんですね。
私はルールは守りたい方なんですが、
なんせ月200時間の稼働、しかも
8社掛け持ちしてましたから、
全社にきっちり月末に提出するのは
大変なことでした。ある会社に、
どうしても月末に寄る時間がなく
翌日に提出しに行くと、事務の方が
「皆さんに月末に提出して頂いて
ますので、武内さんだけ例外には
できないんですよ。」と言われました。
その時から私は、自称
『シンデレラ・ヘルパー』と名乗り、
何が何でも月末の夜12時までに
会社のポストに入れに行くように
なりました。

鬱の傾向があるという説明を受け
ある高齢男性の担当になりましたが、
私が行くと、よく話すし、よく笑うし、
普段は自分で食事したり着替えたり、
とても鬱とは思えない方でした。
動作が遅く、歩行が小刻みで
転倒の危険があり、夜は南京虫が
出て来て眠れないとこぼしてました。
身体に虫刺されの後はなく、部屋も
掃除が行き届いてましたので、私は
間違いなく幻視だと思いました。
そして、それらの症状を総合すると、
どう考えても『ルビー正体型認知症』
だという確信に至り、事業所の
所長さんにそう申し上げると、
「ケアマネさんは鬱だって
言ってるんだよね~」と言われ、
それっきりになりました。

登録ヘルパーが新規の利用者さんの
担当になる時、サービス提供責任者
の方から利用者さんの情報を得て、
支援の現場に同行して仕事を覚える
訳ですが、きちんと利用者さんの
病歴から何から伝えて下さる方は
滅多にいませんでした。何をして
帰るのか、それを見て覚える、
そして若干の注意点だけ教わる、
その程度で仕事してるヘルパーが
この業界では実に多いと思います。
学校では『チーム・ケア』という、
医師・看護師・ケアマネ・サ責・
ご家族、そしてヘルパーまで皆で
利用者を支えるなんてことを
教わって資格を取るんですが、
とてもじゃないが、その輪の中に
自分が入ってるなどとは思えない
ような現場の実態でした。

「会社の社長さんでプライドが高く
神経質だから気をつけてね。」と
言われて始めた支援なのに、
更衣介助中に自分の手が社長さんの
鼻先に触れてしまいました。
社長さんは激怒し介助を拒否、
その日は奥様に続きをお願いして
帰りました。事業所にその旨報告し、
翌週また支援に行くと、私の顔を
見るなり拒否されてしまいました。
私はとっさに、その場に土下座し
「先日は申し訳ありませんでした。
どうかもう一度だけチャンスを
頂けませんでしょうか。お願い
します!」と言いました。
奥様は涙ぐみ「お父さん、ヘルパー
さんにこんなことさせないでよ…。」
とフォローして下さり、何とか支援を
行うことが出来ました。その日から、
私と社長さんの信頼関係が徐々に
深まり、やがて毎日私に来て欲しいと
言って頂けるようになりました。
サ責の方からも、妻からも、
「土下座なんて…」と言われましたが
私、舞台では何度か土下座したことが
ありましたが、実生活では経験が
なかったんで、一度やってみても
いいかな?って、とっさに
思っちゃったんですね。

利用者さんもヘルパーも
生身の人間同士ですから、
色々なことがありますよね。でも、
相手にレッテルを貼ってしまわずに、
心の通い合いの中から信頼関係を
深めて行くことが大切なんだと、
自らの体験で学びしましたよ。

武内利之の「ザッツ・ライフ」
原則、毎週月・木の朝に更新。

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