2016年9月4日日曜日

NHK大河ドラマ「篤姫」

2008年にNHK大河ドラマ「篤姫」が放映され、
早いもので、もう8年も経ってしまいました。
初めて放映期間中にアンコール再放送されるほど
の人気で、平均視聴率は24.5%と幕末を舞台に
した大河ドラマとしては過去最高。過去10年の
大河ドラマとしても、2002年の「利家とまつ」
の22.1%を抜いて、最高の視聴率となりました。

私は歴史ドラマが好きですが、出演者や脚本の
質によっては気に入らない場合もあり、初回の
放映を観て気に入れば1年間観続けますが、
気に入らなければ次回から一切観ません。

私にとって「篤姫」は、それまで観た大河ドラマ
の中で一番のお気に入りです。出演者もそれぞれ
の個性が活かされ、皆さん良い演技をされていま
したし、照明・衣装・セットも素晴らしかったし、
何より音楽(吉俣良氏)と脚本(田渕久美子氏)
が素晴らしかったです。それまでの時代劇には
ない魅力を感じました。

例:その1

薩摩の実家で、篤姫の実母と小松帯刀夫妻が
篤姫の話をしています。皇女和宮お輿入れを控え、
とても忙しくしているらしいとの噂話です。

実母「そのせいでしょうか、近頃はあの子のこと
    ばかり考えてしまうんですよ。」
小松夫人「お逢いしとうございますね。」
(動画31’26”)
https://www.youtube.com/watch?v=4kUsf-V-i5M

時代劇で「お逢いしとうございますね」という
セリフ、珍しくないですか?でも、人々の存在感
がリアルに伝わって来ますよね。皆さんには
「逢いたい」と思える人、何人いますか?

例:その2

薩摩藩の有馬新七を始めとする急進派9名が、
同じ薩摩藩士に制圧された寺田屋事件。自分の
部下を切ってまで京の治安を守ったとして、
島津久光は朝廷から絶大なる信頼を得ることに
なります。しかし、小松帯刀は納得がいかず
こう呟きます。

小 松「江戸へ行くことにも嫌気がさしました。」

     すると、大久保利通が尋ねます。

大久保「久光様を信用できなくなっておいでなの
     ではございもはんか?寺田屋の一件のせ
     いでごわすか?」
小 松「私は、有馬さんたちが哀れでなりません。」

そこで、大久保は有馬らの行動の真意が日本国や
薩摩藩の為であり、久光様もそれをご存じだと
小松に伝えます。そして

大久保「有馬さあの死を無駄にせず、この日本国
     を変えて行くのは、おいたちの天命では
     ございもはんか?」
小 松「天命?」
大久保「今この時に居合わせ、その天命に准ずる
     ことができて、おいは腹の底から幸せち
     思うといもす。」
小 松「…ダメだなあ、私は…。先程の泣き言は
     忘れて下さい。江戸へ行き、斉彬様のご
     意志が成るのを、この目で見届けること
     にします。」
 (動画26’04”)
https://www.youtube.com/watch?v=D__EtWFjLO4

時代劇に「ダメだなあ私は」というセリフ、
珍しくないですか?でも武士だって、そう思う
ことはあったでしょう。

例:その3

島津久光が1000の兵を率いて京へ向かう途中、
下関で西郷が出迎えるはずでしたが、西郷が一足
先に大阪へ向かったことを知った久光は激怒し、
西郷を島流しにせよと命じます。小松と大久保は
大阪へ向かい、西郷にそのことを伝えます。

西 郷「そうか、また島暮らしか…。」
小 松「久光様に事情をお話して、許しを乞うべ
     きです。」
西 郷「その気はありもはん。おいは久光様の元
     では働きたくなかち、どこかで思うちょ
     る。お許しを頂いても、また同じことに
     なるじゃろ。」
小 松「西郷さんがいなくなれば、志士たちをま
     とめる者がいなくなります。」
西 郷「小松様や庄助どんがおれば、大丈夫でご
     わす。」
大久保「吉之助さ、一つ約束してほしか。島でん、
     どこでん、生きて生き抜いて、薩摩の為
     に働ける日を待つと。」
西 郷「(長い沈黙のあと)解った。約束する。」
     大久保「よう言うてくれもした。」
(動画9’45”)
https://www.youtube.com/watch?v=D__EtWFjLO4

このドラマでは、西郷・大久保が下級武士の頃か
ら小松帯刀との交流があり、支え合って来た経緯
を描いています。この3名の「弱さ」も含めた
人間的な部分を多く描いています。

例:その4

小松帯刀と勝海舟の出会いの場面

勝 「こたび薩摩は強引なやり方で幕府の改革を
   迫った。力を散らつかせて脅した。ンなあ
   やり方は下の下です。」
小松「私も、こたびのやり方には納得がいって
   おりません。」
勝 「こりゃあ面白いことだ。薩摩の中にもこう
    いう御仁がおいでとは…。だったら、どう
   すべきだったか、よろしいか?上等な人間
   てものは、力で人は動かさねえもんです。」
小松「では、どうやって?」
勝 「心です。心で動かすもんですよ。」
小松「心で?」
勝 「そういうことです。」
小松「…お言葉、胸にしみました。本当にそう
   ですね。」
勝 「ますます面白い…」
(動画25’37”)
https://www.youtube.com/watch?v=y2_KTJac10w

実際の初対面の際に、こういう会話がされたか
どうかは解りませんが、全くリアリティがなくも
ない、そう思わせる良い脚本だと感じます。

最後に、オーケストラによるBGMと
メインテーマの演奏をお楽しみ下さい。
ドラマのBGMは俳優の演技を引き立たせる為に
あるので、観る者が音楽にばかり気が行ってしまう
ようではいけないのですが、吉俣氏の音楽は
俳優と同等の自己主張が感じられ、音楽だけ聴いて
いても心地良いのです。にも関わらず、演技を
決して邪魔しない、素晴らしいコラボレーション
になっています。心から尊敬します。
https://www.youtube.com/watch?v=yWTS2BEpR6Y

名もなき親爺が人生を語る世にも不思議なブログ
武内利之の「ザッツ・ライフ」日曜の午前に更新

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