2016年6月5日日曜日

児童劇との出逢い

演劇学校を卒業した私は、ある劇団の研修生になり
ました。小日向文世や余貴美子が同期生でした。
卒業する前に他社のミュージカル公演の出演依頼を
受けていたので、入団後すぐにミュージカルに出演
することになりました。しかも上演場所が、なんと
その劇団の劇場でした。当時その劇団で活躍して
いた笹野高史さんが観に来てくれました。

その劇団での私の立場は研修生ですから、給料は
頂けません。それどころか、レッスン代を払い、
公演の度にチケットノルマを課せられ、売れても
売れなくても、お金は収めねばなりませんでした。
公演中は毎日、劇場の準備・後片づけをさせられ
ました。当然、アルバイトとの両立が必須でした。

私のミュージカルを観て下さった今は亡き相米慎二
さん、後に『セーラー服と機関銃』を監督すること
になりますが、当時は助監督をされていた方が声を
かけて下さり、『星空のマリオネット』という映画
に出演しました。今は亡き三浦洋一さんの主演で
私は2シーンに出るだけのチョイ役でしたが、
ちゃんとギャラを頂きました。制作会社はATGと
いって、東映・松竹などの既存の大会社とは一線を
画し、新進気鋭の監督や俳優を起用して革新的な
映画を制作していました。桃井かおりさんや水谷豊
さんもATG映画を足場にスターになられました。

入団後すぐにミュージカル・映画と出演した私は、
劇団から「研修生は外の仕事は禁止。」と言われ
「ならば辞めます。」と言って退団しました。

でも、映画を観たラジオのプロデューサーから
声がかかり、ラジオドラマに1クール(3ヶ月間)
出演しましたが、プロデューサーへのサービスを
怠ったためにリピートが頂けず、演劇学校卒業後の
快進撃はそこで止まりました。

下積みの役者は仕事が来ないと、ただアルバイトに
明け暮れ、なけなしの金で芝居や映画を観たり、
飲み歩いたりという暮らしになります。気がつくと
私は、用もないのにATGの事務所に顔を出しては、
助監督さん達とだべったりしていました。情報を
頂き、永島敏行さん主演の『サード』、今は亡き
古尾谷雅人さん主演の『ヒポクラテスたち』、
荻野目慶子さん主演の『海潮音』のオーディション
を受けましたが、どの作品もチョイ役すら頂け
ませんでした。だんだん、仕事欲しさにATGに
出入りしている自分が卑屈に思えて来ました。

実は私、土・日・祝日に効率よく稼げるバイト
として、遊園地の野外ステージでぬいぐるみ劇を
やってたんです。で、そこで一緒だった女優さんが
児童劇に出ると聞いて、私も紹介してほしいと
お願いし、一緒に出演することになったんです。
最初は脇役でしたが、だんだん良い役がまわって
くるようになりました。出番もセリフもたくさん
ありましたし、何よりいつも満員の観客の前で
演じることが出来ました。自分の一挙手一投足で
泣いたり笑ったりしてくれる純粋な小学生達が…。

大分県別府市で『赤毛のアン』を上演し、終演後に
俳優が出口で観客を握手で送り出す『送り出し』を
していた時、顔を真っ赤に泣き腫らしたお母さんが
小さな3人の子どもさん達とともに、握手をして
帰られました。翌年『足長おじさん』という作品で、
同じ会館で公演し、今度はロビーで観客と俳優との
交流会をしました。その時、去年のあのお母さんが
3人の子どもさん達とともに参加しておられ、発言
されたんです。「去年、夫が急死し、私一人で幼い
3人の子をかかえ、正直無理心中しようかという
ところまで考えました。そんな時に『赤毛のアン』
の公演があることを知り、せめてこの子達に劇を
見せてやってから…、と思い鑑賞したら、とても
感動し、頑張って生きていく勇気を頂いたんです。」
そうおっしゃり、今度は私の方が、顔を真っ赤に
泣き腫らすことになりました。

私は、用もないのに映画会社に出入りしてる自分と
決別し、児童・青少年演劇と共に生きて行くことを
決心しました。

Because, that’s my life !

【お知らせ】

いつも、ご愛読頂き、有難うございます。
更新のタイミングですが、
これまでは月曜日の朝7:00~7:30頃でしたが、
今後は日曜日の午前中9:00~11:00に
させて頂こうと思っています。
また、イレギュラーな更新の際は、
なるべく事前にお知らせしたいと思っています。
今後とも、よろしくお願い致します。

ということで、来週いきなりイレギュラーな企画!
「我が青春の歌」Part1~4 を
13日(月)~16日(木)まで毎夜21:00~21:30
頃にアップする予定です。乞うご期待!

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