2016年5月9日月曜日

介護文学

霞が関のお役人さんは霞ヶ関文学が
お得意だと、もっぱらの噂です。
『目指す』と書いてあれば、それは
『やらない』を意味するとか、
『等』と1文字入っていれば
『何でもあり』になるとか、嘘とは
言えないが人々に幻想を与える言い
回しを、そのように呼ぶのでしょう。
介護の世界にも、霞が関文学ほど
手の込んだものではありませんが、
介護文学と言いたいようなものが
あると、私は感じています。

訪問介護終了後に、自分の行った介護
の内容を記録します。その記録用紙に
『利用者の様子』を書く欄があります。
そこに「お元気でした」とか「いつも
とお変わりなし」と書いてはいけない
と会社から指導されます。会社は行政
から指導されてます。ヘルパーの主観
で書いてはいけないんだそうです。
客観的事実のみを書きなさい、という
指導に従い、特筆すべきことが何も
ない場合には「何もお話にならず、
ずっとテレビをご覧になってました。」
などと書くことになります。

私は想像します。もしご家族(娘さん)
から電話がかかってきて、利用者さん
(お母さん)の様子を聞かれたら…

娘「母は、どんな様子ですか?」
私「何もお話にならず、ずっとテレビ
  をご覧になってました。」
娘「…で?」
私「…は?」
娘「…母は元気なんですか?」
私「…私の主観ではありますが、
  お元気ではないかと…。」
娘「…いつもと変わりないんですね?」
私「これも私の主観ではありますが、
  お変わりないように思われます。」
娘(それなら最初からそう言って!)

サービス提供責任者から
利用者さんの様子を聞かれたら…

責任者「〇〇さんは、どんな様子?」
私  「何もお話にならず、ずっと
    テレビを見てました。」
責任者「…で?」
私  「…は?」
責任者「…元気だった?」
私  「…私の主観ですが、お元気では
    ないかと…。」
責任者「…いつもと変わりない?」
私  「これも私の主観ですが、お変わり
    ないように思われます。」
責任者(それなら最初からそう言って!)

ってなことに、なりはしませんかね?
主観でなく客観的事実のみで利用者
さんの様子を伝えるのは、意外に難しい
ものです。肝心要の元気かどうか、
変わりはないか、それが書けない…。

『食欲旺盛』も『楽しまれました』も
『意欲的に』も、みんな主観です。
「ご飯一膳とおかずを完食。」とか
「50mほど歩かれました。」とか
「時折笑顔がこぼれました。」とか
書けば客観的事実を書いたことになり
ますが、果たして普段と比べてどう
だったかは知るよしもありません。

サービス提供責任者の仕事の1つに
『支援計画書』の作成があり、その中
に短期目標・長期目標を書く欄があり
ます。介護者の支援とご本人の努力に
よって改善が見込まれる方なら
書きようがありますが、悪化すること
はあっても改善は見込めない方の場合
書きにくいものです。私の文章力では
上手い文章は書けそうにありません
ので、諸先輩から学び、介護文学を
マスターせねばと思っています。

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