私がまだ俳優だった頃
秋田市内の会館に6年連続で
公演に行ってたことがありました。
最初のうちは夏の暑い盛りに
呼ばれて行ってたんですが
ある年は真冬に呼ばれたんです。
当時の高速道路は秋田までは
伸びておらず、岩手県のどこかまで
東北自動車道で行って、そこから
下道を走ったんだと思いますが、
東北自動車道の仙台南あたりに
ちょっと下ってて、ちょっとカーブ
してる所があったんです。トラックと
マイクロバスとで走ってたんですが、
トラックの運転手がそこで路肩に
停車しちゃったんで、マイクロも同調
して止まっちゃったんです。雪が
降って、だんだん積もって来たんで
運転手が怖くなってチェーンを着け
ようとしたらしいんです。そしたら
後続車が次々とブレーキ踏んで
スリップして、私達を追い越して
行ったあたりで玉突き事故!!!
ドカ~ン! ドカ~ン!って
恐いの恐くないの!いずれ自分の方
に向かってトラックが突っ込んで
来るんじゃないかと怯えきって
ましたよ。でも幸い突っ込んで来る
車はなく、我々は2台ともチェーンを
履き終えると10数台の玉突き現場
を横目に走り出しました。事故の
原因を作っといて、いい気なもんです
けど、その時は運転手も必死だったん
でしょう。なにしろノーマルタイヤで
行ったんですから…。
その劇団は家族的な劇団で、さほど
手広く仕事してた訳じゃないんで、
スパイク・タイヤなんて持って
なかったんです。営業力がなくて
帯のスケジュールが作れず、単発で
秋田へ行くもんだから、レンタルする
金もないんですよ。でも、だからって
ノーマルタイヤで行きますか?
度胸ありますよね~
現場に着くなり、会館の方が
「夏タイヤで来たのか~い!」って
目を丸くして驚いてましたよ。
私はその時、生まれて初めて
『夏タイヤ』という単語を耳に
しました。タイヤに夏や冬がある
なんて、考えもしませんでしたから。
山形の幼稚園に
単発で行ったこともありました。
幼稚園の公演なんて予算10万程度
しかありませんから、俳優・スタッフ
合わせて5名の小編成で行ったと
しても採算は合いません。行く前に
「ギャラ有りで泊なしと、ギャラなし
で泊ありと、どっちがいい?」って
聞かれました。私は仕事で行く以上
ギャラは頂きたかったんで
「ギャラ有り。」って答えたら
武ちゃんがそう言ってるからって
宿泊なしの公演になっちゃいました。
前の晩に東京を出て夜通し走り、
翌日の午前中に山形の幼稚園で
公演して、ちょっと仮眠してから
その日のうちに帰って来るという、
信じられないようなことを本当に
やってましたよ。いくら家族的でも
そりゃないですよね~。
しかも、まるで私が決めたみたいに
言われちゃって…。
でも秋に行ったんで、最上川流域に
稲穂の波が黄金色に光って風に揺れ
赤とんぼがいっぱい飛び交う光景は、
都会育ちの私を酔わせるに充分な
光景でした。
To be continued
武内利之の「ザッツ・ライフ」
原則、毎週月・水・金の朝に更新。
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