2018年7月22日日曜日

貧乏人の子

私は貧乏人の子だった、なんて言うと
心底貧乏な体験をした方に
怒られてしまう程度のものでしょうが、
私の親父はジャズマンで、
さほど高収入という訳でもなにのに、
毎月わずかの生活費だけを母に渡して
残りは全部自分の小遣いとして
使ってしまう人だったので、
私の育った家は、そこそこ貧乏と
言えるような環境でしたよ。

出前をとったり、外食したりの頻度が低い
ばかりでなく、「何がいい?」って聞かれても
値段の高いものは食べたことないし、
食べようとも思わなくなってましたよ。
小学校4年生ぐらいだったでしょうか、
家族で中華屋さんへ行って「何がいい?」
って聞かれて、壁にいっぱい貼ってある
お品書きの中に「ワンタンメン」ってのが
あって、どんなものか知らないけど
ちょっとだけラーメンより値段が高かったから
美味しいのかも知れないと思って
「ワンタンメン」って言ったら、母は目を
丸くして「何で?美味しくないよ!」って
言いました。私はすかさず「じゃ、ラーメン。」
って言いました。

浴衣着て縁日に連れてってくれる時は、2つだけ
何か買ってもらえることになってるんですが、
ちっちゃな筒にハッカが入ってて吸うやつと、
風船ヨーヨーってことになるんですね。ある日
知らない女の子達が1人1つずつ綿菓子持って
舐めながら歩いてたのを見て羨ましくて、
意を決して綿菓子屋を指さして「あれがいい。」
って言ったら、間髪入れず「美味しくないよ!」
って言われて、おしまいになりました。
そういう経験の積み重ねによって、貧乏な家の
子は「一番安いものが一番欲しいもの」っていう
演技をして「ラーメン!」とか「ヨーヨー!」
とか言うようになるんです。誰から教え込まれた
訳でもなく、子どもなりの処世術を自然と
身に着けていく訳です。

そんなこともあって、自分が親の立場になったら
自分の子がそういうことにならないように
したいと思ってましたが、果たしてどうだったか
子ども達に聞いてみなきゃ解りませんね。
その代り、私の親は習字だとか、日舞だとか、
ピアノだとか、習い事は頼みもしないのに
通わせてくれました。苦しい家計の中から
そういうことにお金を使って頂いて、
有難かったと今更ながら感謝しています。

私も子ども達に、習い事をいくつか
させましたが、見ていてあまり熱心と思えない
場合は「好きでないようだから、止めなさい。」
って引導を渡したり、合唱団が海外遠征をする
って言われた時は「あの合唱団は、わざわざ
海外へ出かけて行って聴かせなきゃならない
ようなレベルじゃない。」と言って、参加を
許しませんでした。
高校卒業後の進路については、
「大学ってのは勉強が好きで好きでたまらない
って人が行くところだから、そんなに勉強が
したいなら行きなさい。学費出してやるから。」
って言ったら、息子も娘も大学進学を選択
しませんでした。

「美味しくないよ!」と大して変わらない
ものの言い様だったかな…

名もなき親爺が人生を語る世にも不思議なブログ
武内利之の「ザッツ・ライフ」日曜の午前に更新

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